ねことのひととき

ねこに癒される日々

1番大切していた・・・ 記録28

60歳で脳梗塞を発症。現在77歳認知症発動中のじじ様。わがまま、ストーカー、暴力、挙動
不審に驚きばかりの日々です。


親としての威厳が失われていくのは哀しいものですが、親も人間だと改めて感じ、見つめな


おすことばかりです。親子という近い立場ゆえ苛立ちが爆発したり、ひどい言葉を発して


と後々で後悔することが多い中、考えや気持ち、今まで生きてきた環境、様々な想いを知る


事が出来るような気がします


認知症は治らない病気、将来80歳以上の大半の人が発症すると言われています。


私の父も認知症の診断を受けています。脳の中で何が起こっているかわかりませんが、 何


かをする、行動する、の前に何か理由、原因が必ずあると思っています。じじ様は人間の本


能の心思うまま行動するのです。


1番大切にしていた人


今日は朝から寒かった。


朝早くから外をパトロールするじじ様も さすがに寒さに気づいたのだろう、


おとなしくソファーに座り ぼ~っとしていた。


退屈そうだったので 初孫の(私の長男、現在30歳)小さな頃のアルバムを見せて


みた。


どうせ 忘れてしまっているだろう。


 じじ様をなめてかかっていた。


アルバムを静かにめくり、気難しい真剣な顔のじじ様。


そして 私の顔をしっかりみると


「この人は・・・・


「この人は、、、俺が」


1番 大切にしてた人だ


 ともったいぶって 一言一言を区切る。


覚えているんだ!!


そりゃ、大切でしょう。


母親の私から いつも取り上げ、映画に外食に買い物、アトラクション、ゲーム、


毎日毎日 じじ様と初孫2人で贅沢三昧。


じじ様には 男の子供が授からなかったから 初孫の男ときたからには ほんと


無二の親友、言葉通り 目に入れても痛くなかったのでしょうね。


お陰で小学校に入る前には 体重45kgの巨漢に育ちましたよ。


今現在はまあ、人並みの体重に整えていますが、本人いわく黒歴史の体形。


だが、じじ様の愛情は初孫にきちんと伝わっており、県外に就職した今でも


じじ様の様子を心配してくれている優しい子に育ってくれた。


そこは じじ様ばば様に感謝するばかりだ。


アルバムを大切そうに何度もめくるじじ様。


「この人は今 どこにいるのかな」


「あ~、結婚して 今は違うところに住んでるよ」


一応 結婚式の写真 飾っているんだけどな・・・


「なんで?!結婚なんて・・・」


じじ様 ショック受け中。


「うん、奥さんも可愛くて、いい子だよ」


じじ様の目が大きくなる。


「なんで・・・」


「う~ん、なんでと言われても」


「この人はまだ海で泳いでるんだ」


 はっ?!


 何の話?


 アルバムには海の写真はないぞ。。。


 「この人はもうすぐ 船に乗るんだ」


 えっ? 


 船ね・・


 「そして こんな大きな魚をとる!」


両腕を大きく広げて言うじじ様。


 ん? なんの物語なの?


じじ様の頭の中では この写真がどのように変換されているんだ?


 初孫、ってわかってる?


 「そして・・・沈む・・・」


遠くを見る目で窓の方を見るじじ様。


 そして、 どうなるの?


 沈んだの?


 無言で立ち上がり 外のパトロールにいく。


ねぇ、どうなるか教えて!!


ばば様 買い物から帰宅。


じじ様もばば様の後ろから帰宅。


散らかったアルバムを発見したばば様は 早速アルバムに夢中。


「もう 結婚していないんだよ今は。」


とばば様に説明するじじ様。


ここは あれを見に行った時、 これは確かこれを食べに行った時、


と写真を指さしながら ばば様と懐かしい昔のことをはなすじじ様。


ねぇ、じじ様 船が沈んだ後は?