ねことのひととき

ねこに癒される日々

一言の本心

60歳で脳梗塞を発症。現在77歳認知症発動中のじじ様。わがまま、ストーカー、暴力、挙動
不審に驚きばかりの日々です。
   
親としての威厳が失われていくのは哀しいものですが、親も人間だと改めて感じ、見つめな
  
おすことばかりです。親子という近い立場ゆえ苛立ちが爆発したり、ひどい言葉を発して


と後々で後悔することが多い中、考えや気持ち、今まで生きてきた環境、様々な想いを知る


事が出来るような気がします


認知症は治らない病気、将来80歳以上の大半の人が発症すると言われています。
私の父も認知症の診断を受けています。脳の中で何が起こっているかわかりませんが、 何


かをする、行動する、の前に何か理由、原因が必ずあると思っています。じじ様は人間の本
能の心思うまま行動するのです。


面会


じじ様が保護入院になってから 1ヶ月がたちました。


その間、何度か面会に行けども 昼寝中やら機嫌が優れないやらでとうとう会えず


じまい。


病院から電話があり、1ヶ月の経過報告とこれからのことに関しての説明をしたいとの事。


ばば様に伝えると ばば様も一緒に説明を聞きに行きたいと。


「ついでにじじ様の面会もして行こうか、結局ずっと会えなかったから」


と言うと


「そうね・・・・」


暗くふさぎ込むばば様。


会いたくないのか、後悔しているのか、よくわからないばば様だ。


最近は状態が不安定気味のように見える。


担当医との説明会の日。


行動見解


 *うろうろと徘徊し、壁や机をたたく
  →以前の職業の名残(じじ様は以前は左官業)


 *他の患者さんに喰ってかかる
  →何かの親切心(じじ様の世界には危ない妄想の虫や人物がいる為)
   :患者やさんに注意している、もしくは患者さんを庇っている


 *食事を嫌がる
  →環境の変化、知らない人がたくさんいる為(じじ様は人見知り)


その他、おむつを交換をするのを嫌がり3人掛かりで交換したり、


食事を食べさせると吐き出したり、突然目つきが険しくなり叫びだしたりと


なかなか 手がかかる様子。


それでも 若干入院当日よりは落ち着きはしてきているらしい。


「・・じゃっかん・・・」


ばば様がつぶやく。


担当医はこれからまた1ヶ月間を目途に薬を調整してくれると言われた。


ばば様に安堵の顔が見えた。


ばば様はじじ様が家に帰って来るのが怖いのだ。


こんな若干良くなったというじじ様でも。。。


とりあえず また1ヶ月病院にいてくれることがわかって ばば様はやっと


安堵したのだ。


これほどにもばば様の心は疲れ果てていたのか。。。


まっ、先の事はどうにかなるさ、また後で考えよう。


話が終わり、また1か月後の経過報告の為予約を入れた。


その後、じじ様入院してからの初めての面会。


「今日は食事が取れていなかったので点滴をしています。」


廊下を歩いている途中で看護婦さんが明るく話す。


点滴・・・


頭の中では点滴をしている患者さんの穏やかな顔が想像していた。


面会室でじじ様を待つ。


そして5分ほどして 連れてこられたじじ様は 車椅子に乗って点滴の管と一緒に現れた。


絶句


一瞬、言葉が止まった。


下を向いたまま ぶつぶつと独り言を言っているじじ様は1ヶ月前に比べ 半分ほどに


痩せていたのだ。


背中は服を着ていても骨が出ているのがわかり、腕は骨に皮がついているように細く


なり、足は棒のようで筋肉がなくなっていた。


これではもう自力で歩くこともできないのでは・・・。


脳梗塞で麻痺が少し残っていた右手は固まってしまい、開かない。


あれほど頑張ってリハビリして動くようになっていたのに。


哀しみ。


何が悲しいのかわからないほど、どうしていいのか、どうしたらいいのか、


頭が真っ白だった。


認知症が治らないとはわかっていても やはり元気でいてほしい、


入院したら少しは以前の様に元気になるかも、話しができるかもしれない、という淡い期待


予想以上の現実を思い知らされた。


じじ様は机を動く左の人差し指で”トントン”と叩き続ける。


話しかけても反応はない。


ばば様はじじ様の硬くなった右手を両手でマッサージする。


「こんなに痩せて、ご飯食べないと」


「会いに来るのが遅くなってごめんね」


「夜は眠れてる?」


「痩せたのに 髪の毛はふさふさね」


確かに、スキンヘッドだったのに髪の毛が生えてきている。


帰りにじじ様の散髪を予約していこう。


ばば様は反応のないじじ様に一生懸命話しかけた。


一瞬顔をあげたじじ様


「お母さん」


と大きな声でばば様に言うと また下を向きぶつぶつと独り言を言い出す。


面会時間の10分がくるとじじ様は何も言わず看護婦さんに連れられて部屋に戻って


行った。


薬の影響なのか、認知が進んでいるのか わからない。


ただ、もう以前のじじ様には戻らない。これが現実。


帰り道、ばば様は言う。


「病院を退院したら 施設を探さないといけないね・・・」


きっと ばば様もじじ様の今の姿を見て、変わりゆくじじ様を見ていられないのだろう。


1ヶ月前までは 退院したら家で介護する覚悟でいたのだが。


また別の意味で心が折れそうになる。


「じじ様に合う良い施設を一緒に探してくれる手伝いをしてくれるケアマネージャー


さんがいるから相談してみるよ」


切り替えが早いばば様は家に着くと、じじ様の全てを忘れたかのように


テレビを見て大声で楽しく笑っていた。


人間とは見たくないもの、考えたくないものを一瞬で吹き飛ばす事が出来る生き物だ。



じじ様 ちゃんとご飯食べれるようになるといいけど。