ねことのひととき

ねこに癒される日々

踊る黒いもの      記録32   カウント 27

60歳で脳梗塞を発症。現在77歳認知症発動中のじじ様。わがまま、ストーカー、暴力、挙動
不審に驚きばかりの日々です。


親としての威厳が失われていくのは哀しいものですが、親も人間だと改めて感じ、見つめな


おすことばかりです。親子という近い立場ゆえ苛立ちが爆発したり、ひどい言葉を発して


と後々で後悔することが多い中、考えや気持ち、今まで生きてきた環境、様々な想いを知る


事が出来るような気がします


認知症は治らない病気、将来80歳以上の大半の人が発症すると言われています。


私の父も認知症の診断を受けています。脳の中で何が起こっているかわかりませんが、 何


かをする、行動する、の前に何か理由、原因が必ずあると思っています。じじ様は人間の本


能の心思うまま行動するのです。


破壊時間


12月16日 土曜日。


昨日の夜から ばば様は


眠る事が出来ず そのまま 朝5時半からパートに出かけた。


じじ様も朝8時まで独り言を続け、疲れたのか、ソファーに座り 伸びていた。


頭の中の時間は摩訶不思議になっていても お腹の時間は必ずやってくるらしい。


台所で朝ごはんの支度をしていると じじ様は申し訳なさそうにやってきた。


ばば様がいるときは 昭和時代の関白亭主の如く


「めし」


の一言だ。


それが娘になると 何も言い出せずただ突っ立ている。


振り返るとズボンをはいていても わかるぐらいに尿が溜まったおむつが垂れてしまって


いる。


「じじ様、ご飯食べる前に おむつ着替えようか?」


ズボンを脱がせようとすると


「何をするんだ!」


といかにも私が無理やり脱がせて ズボンを取り上げようとするかのような言いぐさだ。


「自分で脱げる? なら着替えて。」


たまに自分でズボンを脱いだり、はいたりするのが出来ることもあるので 自分でやらせて


みた。


再び台所に来たじじ様は ズボンの上からおむつをはいていた........


もう 別にいいや。


「じじ様 顔 自分で洗える?」


「はっ? 太陽を洗うのか!


「えっ?」


なぜ、太陽を洗う? そもそも 太陽は洗えん!


「顔ね!!もう顔は後でいいよ、お腹すいたでしょう?」


じじ様はいそいそと居間に戻ろうとしていたが


お腹がすいていたのか台所のパンを手で掴むと急いでポケットに入れて


いるのが見えた。


もしかしたら ご飯より パンの方が好きなのか・・・


前歯がないじじ様は器用にむしゃむしゃと奥歯で よく噛んで食べる。


だから お年よりがよくのどに詰まらせて・・・との事件にはならない。


病院の薬を饅頭に混ぜて 飲ませた時も よく噛んで 違和感のある薬だけ


吐き出してしまうという 高難易度の技も取得済みだ。


ただ 認知症の症状らしく、ポケットに入れたパンの存在は忘れ、パンを取り出したとき


はもう食品ではない状態だった。


朝ごはん 終了。


ご飯は綺麗に食べつくすじじ様、 有難いですね。


後片付けをしていると じじ様 家の中徘徊がはじまった。


運動は体にも 頭にも良い。 いいことだ。


洗い物をしていると 異様なにおいが漂ってきた。


ふと 後ろを見ると じじ様が また 下半身むき出しで歩いている。


手に持っているのは 尿をたんまりと含んだおむつ。


異様なにおいのもとがこれだ。


きゃ~、やめて。家中ににおいが充満する~。


「じじ様、 おむつ捨てよ」


「あ~、捨てるよ、これ」


とトイレに向かうじじ様。


見ると、じじ様が歩いてきた廊下には 尿らしきものの跡が・・・


お湯を沸かし そのお湯を廊下にぶちまけた。


これぞ 熱湯消毒!


大の方よりましか・・・・そう思いながらも 心は折れる。


ばば様 帰宅。


じじ様は ホッとしたように ばば様に近づき 着替えをしてもらっていた。


困ったことにじじ様は娘に着替えやトイレを手伝ってもらうのが 嫌のようだ。


ばば様が帰ってきて ご機嫌な様子のじじ様。


ばば様はトイレで見つけた尿をたっぷり含んだおむつを見てげっそり


15時。


最近のじじ様時計は 15時と19時あたりに 破壊スイッチオンが入る。


玄関をガチャガチャと何度も回す音。


じじ様の怒鳴り声。


居間に行くと・・・


テーブルはひっくり返り、押し入れの中の布団は玄関にぶん投げられ、バケツや椅子が


はちゃめちゃに部屋に転がっていた。


部屋の隅っこの座布団の上に 魂の抜けたばば様が座っている。


「どうした?」


「もう、 笑いしかでないね」


 と 家の中の破壊状態を見つめ ばば様は悲しく笑う。


じじ様は棒を持って 見えない誰かと話しながら 徘徊する。  


棒で 窓や柱を トントンとたたいていく。


もう。。。私たちが知っているじじ様ではなかった。


じじ様が落ち着くまで 待とう。


しばらくすると 畳の上に胡坐をかいて 指先で何かを追いかけていた。


「何がいるの じじ様?」


声をかけた。


「黒い 丸い。たしか  ・・・あっちにもいたんだが」


あ~、じじ様には 虫みたいのが見えて 嫌だったのかしら。


「もういなくなったの?」


「いや、 今 踊ってる


「はッ?!!」


ん~、そうなのね、踊っているのね、わかった。。。。


少し落ち着いたようなじじ様は 今度は楽しく独り言を話す。


いや、じじ様には何かが見えていて それと意気投合しているのかもしれない。


ずっと、ずっと 、話すじじ様。


くっくっくっ。。。


楽しく可愛く話すじじ様を見ているばば様は 


「いつもこうだといいのだけどね・・・」


と片付け始める。










































































ばば様 トイレの中に尿を含んだおむつを発見。