ねことのひととき

ねこに癒される日々

よみがえる生命力

じじ様が保護入院して ほぼ3ヶ月。


暴れたり、食事拒否したり、容体が急変して救急搬送したり と、病院でもなかなか静かに


していないじじ様だ。


ぼ~っと生きているか死んでるかわからない状態でいるよりは 元気があっていいかも。


コロナやインフルエンザが流行りだした為、面会時間は1回につき2人までの10分間。


なんでも先週より1人部屋から大部屋に移ったらしい。


面会に行くと じじ様はベットごと看護婦さんに運ばれてきた。


それも入口付近の廊下にだ。


ま、大部屋には患者さんがたくさんいるから、もしウィルス系の菌でも持ってきてしまって


患者さんにうつしてしまっては大変、全滅だ。


じじ様はベットに横たわったまま 足から点滴をしていた。


先月面会した時よりも 顔艶が良いかもしれない。


突然 部屋からベットごと廊下に移動させられたじじ様は 何事か!ときょろきょろと目を


動かしていた。


奥の部屋から先月入ってきた じじ様より大変そうな認知症の患者さんが大きな声で


絶えずわめき散らしている。


これは、家族は大変だったろうな・・・


ヘッドギアをつけた人のよさそうな男性がベッドの側によちよち歩きで近づいてきて


じじ様の顔を覗き込む。


「ん~、これなら大丈夫。あと1ヶ月もすれば良くなる、うん、うん。」


そしてまたよちよちと廊下を歩いて去っていく。


次は車椅子でおばあちゃんがスーッときて入口の透明のドアの前で外を見つめる。


ちょうどじじ様のベッドの足元のところだ。


なかなかにぎやかな病院だ。


静かではない。


誰かがどこそこに居る。


そして いつも誰かの声が聞こえる。


じじ様に声をかけた。


「じじさま、わたしだよ、わかる??」と。


多分もうわからないだろうと決めつけて言う。


すると、目がこちらを向き、確かめる様に左手で自分のおでこを軽く叩く。


右手は閉じたまま固まっている。


左手には点滴の後がたくさんのあざになっていた。


可愛そうに・・・と左手のあざをさすると しっかりと私の手を握りしめるじじ様。


あれっ?食事がとれず体も腕も足も顔も半分になっていまっているのに 力は強いじゃん。


そして身をよじらせて起き上がろうとするじじ様。


軽く肩をさすってあげて落ち着かせる。


「ご飯が食べれるようになって、また歩けるようになったら家に帰れるよ」


じじ様はわかっているのか、目で ”うん、うん”と言っている。


先月に比べ、調子が良くなっているようだ。


ほっとする。


言葉にならない言葉を発して何かを話しているじじ様。


なんだか ほんとうによかった、と思う。


まだ 完全に認知症に乗っ取られてはいない様だ。


気になる固まった右手を軽く開いてみようとしたら 痛かったのか「うっ」と言いながら


右手を引き、私をにらむ。


うん、痛みを感じるのは感覚がはっきりしている証拠だ、良かった。


早くも短い10分がたってしまった。


担当の看護師さんが最近の様子を話してくれた。


食事も調子の良いときはとれるし、気分が良いときは鼻歌も歌うそうだ。


次の面会までに点滴が外れてるといいね。


「何をしてるんですか?」


見た目が年齢不詳の美人系の看護師さんが車椅子のおばあちゃんに話しかける。


看護師さんは気さくで愛嬌もいいが、はっきりとしたものの言い方をする。


仕事上ではあるのだろうが、なんとなく淡々としているように感じられる。


「いや、私にもだれか面会に来るような感じがして・・・」


にこやかな顔でじじ様と私を見るおばあちゃん。


そしてまた、透明のドア越しに外を見つめる。


なんだかな・・・せつなさが染みる。