ねことのひととき

ねこに癒される日々

何の訓練?  記録11

60歳で脳梗塞を発症。現在77歳認知症発動中のじじ様。わがまま、ストーカー、暴力、挙動


不審に驚きばかりの日々です。


親としての威厳が失われていくのは哀しいものですが、親も人間だと改めて感じ、見つめ


なおすことばかりです。親子という近い立場ゆえ苛立ちが爆発したり、ひどい言葉を発し


と後々で後悔することが多い中、考えや気持ち、今まで生きてきた環境、様々な想いを知る


事が出来るような気がします


認知症は治らない病気、将来80歳以上の大半の人が発症すると言われています。


私の父も認知症の診断を受けています。脳の中で何が起こっているかわかりませんが、 何


かをする、行動する、の前に何か理由、原因が必ずあると思っています。じじ様は人間の本


能の心思うまま行動するのです。


3本の花



毎朝 朝からシャワーを浴びる私。


今朝は起きてから飲むコーヒーをカップに入れたまま一口も飲まずに浴室に入ってしまっ


た。


シャワーが済んで髪を拭きながらキッチンに向かうと


テーブルに置いてある私のコーヒーカップを立ったまま、ちょうど飲み干すじじ様の姿が


あった。


えっ!なぜ。。


あ~あ。


そう思いながら じじ様の後ろを黙って通り過ぎることにした。


きっと置きっぱなしにしていた私が悪い。


珈琲を飲みたかったのね、きっと。


髪にドライヤーをかけた後、今度は多めにコーヒーメーカーでコーヒーを沸かした。


コーヒーメーカーのこの ”こぽこぽ” という音と香りがとても心地よく好きなのだ。


珈琲が沸く間、じじ様とばば様のカップを準備して、お年寄りは激甘なので砂糖と牛乳の準


備をして・・・


いつの間にか じじ様が静かにコーヒーメーカーの前に険しい顔で立っていた。


そして 私を見ると


「こいつは新兵器か」


とコーヒーメーカーを指でさして聞く。


????????


新兵器って 反対に何?


コーヒーメーカーが最後の仕上がりに ごぽごぽっ と音を立てる。


じじ様は慌てて手を引っ込める。


「珈琲。あとで持って行くから あっちで座っておいて」


珈琲をカップに注いでる私の様子を怪しげな表情で見ているじじ様。


じじ様がいないのに気付いたばば様が じじ様を部屋に連れ戻す。


部屋にコーヒーを持って行くと、何やら2人で手紙を書いていた。


「わー、ももめのコーヒーは美味しいね」


ばば様が美味しそうに飲む。


そりゃ、インスタントコーヒーよりマシだとは思うけど・・


これからは度々コーヒーをいれるようにしよう。


じじ様は出来上がったコーヒーをまだ怪しんでいたが、一口飲むと 新兵器の事はもう


忘れていた。


「なんの手紙書いてるの?」


ばば様に聞くと


「デイサービスの人から誕生日にプレゼントもらったお礼」


先日 じじ様の誕生日に似顔絵と花束をもらったらしい。


「へぇ、良かったね」


じじ様は はがきサイズの似顔絵を大事そうに もじもじと手で触っている。


嬉しかったんだろうね。


私にも見せてくれた。


「似てるよね~、花も3本くれてね、じじ様よかったね」


ばば様は言う。


似てる・・・か? なんとも言えないが。


「ふーん、良かったね」


一応 言っておこう。


ばば様と話していると 待ちくたびれたじじ様が怒鳴る。


「早く、書かんか!」


じじ様は 字が書けない。コーヒーを飲みながら ばば様に指さして偉そうに命令する。


「なにを書いたらいい?」


ばば様は文章を書くのが苦手だ。


でも、2人でやった方がいいだろう、私は退散しよう。


とコーヒーをのせてきたお盆を片手に立ち上がった。


じじ様がばば様に伝える。


「じじ様は なくなりました。」


はっ!?


お礼ではなく、報告?


それも何がなくなったの? 本人?


「それだけ?」


ばば様がじじ様に聞く。


「う~ん、それだけ」


腕を組んでどや顔のじじ様。


意味不明。 手紙に書く事なの?


お礼の手紙ではないの?


まっ、いいか。


休みの日は1週間分の買い出しをしないといけない。


ばたばたと準備をしていると じじ様が近づいてきた。


「大変ですな、 最近はどうですか、調子がいいですか」


くだらないことを聞いてくる。


「何が?」


とりあえず なんとなく返事した。


「いやぁ、鉄砲ですよ」


にこにこして 手で鉄砲の形をするじじ様。


はぁっ?・・・鉄砲????


「最近はよく落ちてますからね」


と悟るような顔で言う。


落ちてる・・・・


弾? 鉄砲?


答えのだしようがない。


「何が?」


しか 言えない。


「こいつらですよ。しょうがないですよ。」


と猫たちを指さす。


猫が落ちてるのは 嬉しいことだ。


今日は一段と理解不可能。


とりあえず買い物に行こう。


玄関で靴を履いてると 暇なじじ様は見送りに来た。


「大変ですな 訓練も」


どこの世界にいってるのだろう。


んん~、きっと私は今日兵士なんだろう。


玄関を開けると奥の左側に小さな花壇がある。


ばば様は花を植えるのが趣味だ。


植えるのだが よく枯れる。


その花壇に デイサービスの方に貰った切花が 3本 立ててあった。


じじ様が立てたのか、ばば様が植えたのか


もう聞かなかった・・・・