ねことのひととき

ねこに癒される日々

守る凶器  記録5

ももめ

60歳で脳梗塞を発症。現在77歳認知症発動中のじじ様。わがまま、ストーカー、暴力、挙動
不審に驚きばかりの日々です。


親としての威厳が失われていくのは哀しいものですが、親も人間だと改めて感じ、見つめな


おすことばかりです。親子という近い立場ゆえ苛立ちが爆発したり、ひどい言葉を発したり


と後々で後悔することが多い中、考えや気持ち、今まで生きてきた環境、様々な想いを知る


事が出来るような気がします。


認知症は治らない病気、将来80歳以上の大半の人が発症すると言われています。


私の父も認知症の診断を受けています。脳の中で何が起こっているかわかりませんが、 何


かをする、行動する、の前に何か理由、原因が必ずあると思っています。じじ様は人間の本


能の心思うまま行動するのです。


 守る・・・

朝7時。


仕事行く前の準備が終わり、猫ちゃんたちの朝のお別れのひとときを満喫の時。


突然


姉ちゃん、姉ちゃん!


叫びながら呼ぶ声。


県外に住む私の妹が20年ぶりに帰省していた。


大体の事情を電話でばば様から聞き、様子を見に来てくれたのだ。


急いで駆けつけると ばば様と妹2人がかりでじじ様にしがみついていた。


「どうしたん。」


興奮状態のじじ様。 じじ様の手には開いたままの状態のはさみが握られていた。


「姉ちゃん、はさみを取り上げて!!」


妹が叫ぶ。ばば様は驚きのあまり固まっている。


とりあえず興奮するじじ様のはさみを持っている方の手首をつかんで力を入れてみた。


びっくりした目でこちらを見るじじ様。私は普段から鍛えるのが趣味で普通の女性よりは力


が出せる方だ。


それに加えて鋭く伸びた爪はかなり身に食い込む。自分よりも強い者が来ると一瞬で意気消


沈する。ったく、女だからとなめてもらっては困る。


ともあれはさみは手から離れた。じじ様はふーふーと興奮していたが、言い訳もする。


「これが、これが・・」とばば様を指さす。何か事情があっての事かもしれない。


深呼吸。


本当は出勤前で無視したいとこだが、聞いてみた。


「ばば様が何かしたん?」


「この人を守らんといかん・・・」


返事をするじじ様。


そう言うと玄関から外に出て行った。小窓から裏庭に行くじじ様の半身とついていく妹の姿が見えた。


落ち着いたかな。


「何があったん?」ばば様に聞く。


「何があったも何も、突然はさみを持って威嚇してきたとよ。」


「それが、目つきが変わって、こわい怖い。」


ばば様は突然でびっくりしたのと怖いのと疲れが顔に出ていた。


うーん、なんだろうね・・・


ばば様と話しているとじじ様が今度はパイプの棒を持って玄関から入ってきた。


ばば様の前に立つと棒をばば様の顔に突きつける。


じじ様のその痩せて弱弱しい立姿に”可哀そう”の言葉が出てきそうで悲しくなった。


差し出している棒を握ると棒を握るじじ様の力が情けないほど力が入っていない。


いらつき、むかつき、困るひと、厄介の感情はない。ただひとつだけ可哀そうに。と思うだけだ。


自分でもどうしていいかわからないのだろう。そう思うと何の感情も出てこない。


「危ないから棒を貸して」


静かにお願いする。


じじ様は棒を離して私にマウンドをとる。


「これで俺を殴るつもりか。」と。


んな事、するわけないし。思わず笑いがでてしまう。


ばば様の言い分だけでは不公平だから、じじ様にも一応事情を聴いてみた。


すると、意外なストーリーがあった。


不審者が家の中に侵入してばば様を攻撃する予定らしい。それが本当ならさすがに怖いもの


がある。不審者は外と家の中に2人いるらしく、こともあろうに2人ともばば様に似ているらしい。


先ほどのはさみ攻撃はばば様を守る為だったらしい。途中で分からなくなり、ばば様本人を不審者と間違えていたのだろう。


そういえば、朝6時くらいから玄関のドアを何回も開け閉めしていて(戸締り確認?)外を


何度も行ったり来たりとしていたのは、巡回警備だったのかしら。


まっ、興奮はおさまったみたいなので大丈夫かな。ばば様と妹が大丈夫と言うので仕事に行


くとする。


心配だが仕事場は近いので何かあったらすぐに家に戻ろう。


駐車場の車に行くとじじ様がまだ巡回している。その後ろを妹がついていく。


運転席に座るとじじ様がこちらに近づいてきた。目つきがまだ正常ではない。するとじじ様


が指で助手席を指すと


「ここにいる!」


やめろー、めちゃこわいじゃん。


ちっとも可哀そうではない、元気やん。くそじじぃ。


無視して車を発進させた。


夜、ばば様と妹はA4の紙に①②③と大きく書き、ばば様が①の時は本物と見分けがつくよう


にしたらしい。


予防対策?


面倒くさ、だったら②③の時があるのか?